パンシャープン処理について説明します。

パンシャープン

パンシャープンの概要

 パンシャープン処理は、分解能が低いカラー画像(RGB画像)と、分解能が高いモノクローム画像を使って、分解能が高いカラー画像(RGB画像)を作成する処理のことです。

 使用する手法は、通常、HSI←→RGB変換処理を用います。

 HSIとは、Hue(色相)、Saturation(彩度)、Intensity(明度)の頭文字で、色の指標を表します。

 RGBは、Red(赤色)、Green(緑色)、Blue(青色)の光の三原色のことです。

 パンシャープン処理は、カラー画像をHSI画像に変換し、変換したHSI画像のうちのI値を高分解能画像のモノクローム値に置き換えて、これをカラー画像(RGB画像)に変換し直すという処理です。

 パンシャープン画像の具体作成方法は、まずはじめに低分解能のカラー画像と高分解能画像の位置あわせを行います。これは、幾何補正処理によって、低分解能カラー画像を高分解能の画像(モノクローム画像)に一致させます。

 次に、低分解能のカラー画像を、RGB→HSI変換によって、色相画像、彩度画像、明度画像に変換します。

 そして、明度画像を高分解能画像(モノクローム)に置き換えます。

 最後に、置き換えた明度画像(高分解能モノクローム画像)と色相画像、そして彩度画像の3つの画像を、HSI→RGB変換によってカラー画像(RGB画像)に変換します。

 これにより、パンシャープン画像が作成されます。

 当サイトで紹介しているリモートセンシング画像処理ソフトウェア『RSP』では、幾何補正処理、ならびにRGBをHSIに変換したり、反対に、HSIをRGBに変換するツールが用意されており、簡単にパンシャープン画像を作成することができます。

 パンシャープンの作成には、HSI変換以外にも、Brovey変換という方法があります。

 『RSP』では、Brovey変換によるパンシャープン画像作成もできます。


パンシャープン画像の作成方法

 Landsat-8を対象に、画像処理ソフト「RSP」を使ったパンシャープン画像の作成方法について記載します。作成する画像は、トルーカラー画像です。

【準備作業(フォーマット変換)】
 Landsat-8のバンド2、3、4、8のGeoTIFFファイルをRSPで取り扱うことができるように、RAWファイルにフォーマット変換します。
 フォーマット変換は、RSPのメニュー「ファイル」→「フォーマット変換」→「TIFF(GeoTIFF)」→「16bit -> RAW(Unsigned int)」で行います。
 4つのファイルをRAWファイルにフォーマット変換した後、以下の作業でパンシャープン画像を作成します。

1.幾何補正処理(拡大画像の作成)
 使用する画像ファイルは、地上分解能30mのバンド2(青波長帯画像)、バンド3(緑波長帯画像)、バンド4(赤波長帯画像)、そして、地上分解能15mのバンド8(可視波長帯画像)です。
 はじめに、バンド2、バンド3、バンド4の3つの画像を、バンド8の画像の位置に合うよう、幾何補正処理を行います。
 バンド2・3・4の画像をバンド8の画像の位置に合わせるには、画像を単に縦横2倍に拡大すれば一致するので、拡大率2倍の画像を作成することになります。
 この場合の内挿法としては、最近隣内挿法を適用する(単に2倍に拡大する)のではなく、なめらかに拡大できるバイキュービック補間を用いた方が見栄えの良いパンシャープン画像になります。
 RSPでは、メニュー「ツール」→「Unsigned integer処理」→「幾何補正」→「バイキュービック補間」で、画像を拡大します。
 (余談ですが、RSPの幾何補正処理(アフィン変換、疑似アフィン変換)で用いている内挿法は、最近隣内挿法です。)

pansharpen 01

 ここでは、「ファイルを開く」でバンド2の画像を指定し、「保存先ファイル名を指定する」では、拡大後の画像ファイル名を入力します。
 次に、補間設定でX倍率を「2」に、Y倍率を「2」に、係数aを「-1」にして、「OK」ボタンを押します。これにより、縦横2倍の拡大画像が作成されます。

 この作業をバンド3とバンド4に対しても行います。
 これにより、地上分解能15mのバンド2、バンド3、バンド4の画像が作成されます。

2.HSI変換
 次に、この3つの拡大画像に対し、HSI変換を行います。
 RSPのメニュー「ツール」→「Unsigned integer処理」のメニュー「演算」→「RGB -> HSI」を選択します。

pansharpen 02

 ここで、「Blueファイルを開く」で拡大したバンド2画像を、「Greenファイルを開く」で拡大したバンド3画像を、「Redファイルを開く」で拡大したバンド4画像を指定します。
 次に「保存先色相(Hue)ファイル名を指定する」で、作成する色相ファイル名を指定し、「保存先彩度(Saturation)ファイル名を指定する」で、作成する彩度ファイル名を指定し、「保存先明度(Intensity)ファイル名を指定する」で、作成する明度ファイル名を指定します。
 これにより、色相ファイル、彩度ファイル、明度ファイルが作成されます。

3.明度をパンクロ画像に差し替えてRGB変換
 次に、明度(Intensity)ファイルをバンド8の画像ファイルと差し替えて、HSIファイル(色相・彩度・明度ファイル)をRGB変換します。
 RSPのメニュー「ツール」→「Unsigned integer処理」のメニュー「演算」→「HSI -> RGB」を選択します。

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 ここで、色相ファイルと彩度ファイルは、上記で作成したものを指定しますが、明度ファイルは、バンド8の画像ファイルを選択します。
 「保存先Blueファイル名」「保存先Greenファイル名」「保存先Redファイル名」は、任意のファイル名を指定します。

4.パンシャープン画像の表示
 作成したBlueファイル、Greenファイル、Redファイルをカラー合成処理(RSPのメニュー「ファイル」→「カラー合成」→「RAW」)した後、メニュー「色調」→「自動色調調整」することで、パンシャープン画像が作成されます。

 以下に、皇居を中心としたパンシャープン画像(2倍に拡大)(上段)と、元画像(パンシャープン処理をしていない画像(4倍に拡大)(中段)、バイキュービック補間処理後の画像(2倍に拡大)(下段)を示します。
 3つの画像のうち、パンシャープン画像が、最も詳細に地表面状況を表しています。

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 パンシャープン画像(2倍拡大)

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 元画像(4倍拡大)

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 バイキュービック補間処理画像(2倍拡大)