衛星データ(衛星画像)のDN(デジタル・ナンバー)を反射率に変換する方法

反射率(大気上端)

反射率(大気上端)への変換方法

 衛星データのDN(デジタル・ナンバー)は、画像として見るには良いですが、画像を解析するにはDNを反射率に変換する必要があります。
 DNを大気上端反射率に変換するには、DNを輝度に変換する式と、輝度を反射率に変換する式を使います。


1.輝度への変換

【ALOSの場合、Terra/ASTER、GeoEye1の場合】
 以下にDNを輝度へ変換する式を示します。


 L = a・DN+b


 ここで、
 L:輝度(W/m2/sr/μm)・・・ALOS、Terra/ASTER
 L:輝度(W/cm2/sr/μm)・・・GeoEye1
 DN:デジタル・ナンバー
 a:ゲイン
 b:オフセット


 式から分かるように、DNを輝度に変換するにはゲインとオフセットを知る必要があります。
 ゲインとオフセットは、ALOS衛星の場合は、衛星データを入手したときのリーダファイルのアンシラリ2に記載されているため、ここから情報を得ることになります。
 ASTERの場合は、拡張子が「.vnirsh」のテキストファイルに記載されています。


【WorldView-2の場合】

 DN(qのこと)を輝度に変換する式は、次のようになります。


 L = absCalFactor・q/Δλ


 ここで、
 L:輝度(W/m2/sr/μm)
 q:デジタル・ナンバー
 absCalFactor:補正係数
 Δλ:有効バンド幅


 absCalFactorと、Δλは、データを入手したときにテキストファイルに記載されています。


【WorldView-3の場合】

 DNを輝度に変換する式は、次のようになります。


 L = GAIN・DN・(absCalFactor/Δλ)+OFFSET


 ここで、
 L:輝度(W/m2/sr/μm)
 DN:デジタル・ナンバー
 absCalFactor:補正係数
 Δλ:有効バンド幅
 GAIN:乗数
 OFFSET:加数


 absCalFactorと、Δλは、データを入手したときにテキストファイルに記載されています。


 GAINは、以下のとおりです。


 Pnchromatic:0.923
 Coastal:0.863
 Blue:0.905
 Green:0.907
 Yellow:0.938
 Red:0.945
 Red Edge:0.980
 NIR1:0.982
 NIR2:0.954
 SWIR1:1.160
 SWIR2:1.184
 SWIR3:1.173
 SWIR4:1.187
 SWIR5:1.286
 SWIR6:1.336
 SWIR7:1.340
 SWIR8:1.392


 OFFSETは、以下のとおりです。


 Pnchromatic:-1.700
 Coastal:-7.154
 Blue:-4.189
 Green:-3.287
 Yellow:-1.816
 Red:-1.350
 Red Edge:-2.617
 NIR1:-3.752
 NIR2:-1.507
 SWIR1:-4.479
 SWIR2:-2.248
 SWIR3:-1.806
 SWIR4:-1.507
 SWIR5:-0.622
 SWIR6:-0.605
 SWIR7:-0.423
 SWIR8:-0.302


2.大気上端反射率への変換

 輝度を反射率に変換する式は、次のようになります。


 ρ = (L・π・d2)/(Esun・cosθ)


 ここで、
 ρ:反射率(%)
 L:輝度(W/m2/sr/μm)
 d:地球太陽間距離(AU)
 Esun:分光太陽照度(W/m2/μm)
 θ:太陽天頂角



 また、Esunは、衛星およびセンサによって異なります。



LandsatのEsunは、USGSのサイト(https://landsat.usgs.gov/esun)より抜粋しています。

Landsat 1-5 MSS
 バンド1: 1848
 バンド2: 1588
 バンド3: 1235
 バンド4: 856.6

LANDSAT 4 TM
 バンド1: 1958
 バンド2: 1826
 バンド3: 1554
 バンド4: 1033
 バンド5: 214.7
 バンド7: 80.70

LANDSAT 5 TM
 バンド1: 1958
 バンド2: 1827
 バンド3: 1551
 バンド4: 1036
 バンド5: 214.9
 バンド7: 80.65

LANDSAT 7 ETM+
 バンド1: 1970
 バンド2: 1842
 バンド3: 1547
 バンド4: 1044
 バンド5: 225.7
 バンド7: 82.06
 バンド8: 1369

ALOS AVNIR-2
 バンド1:1943.3
 バンド2:1813.7
 バンド3:1562.3
 バンド4:1076.5

ASTER
 バンド1:1848
 バンド2:1549
 バンド3:1114
 バンド4:225.4

GeoEye1
 Panchromatic:161.7 (mW/cm2/μm)  (単位に注意)
 Blue:196.0
 Green:185.3
 Red:150.5
 Near IR:103.9

 上記の数値を他の衛星と同じ単位にすると、
 Panchromatic:1617 (W/m2/μm)
 Blue:1960
 Green:1853
 Red:1505
 Near IR:1039

WorldView-2
 Panchromatic:1580.8140 (W/m2/μm)
 Coastal:1758.2229
 Blue:1974.2416
 Green:1856.4104
 Yellow:1738.4791
 Red:1559.4555
 Red Edge:1342.0695
 NIR1:1069.7302
 NIR2:861.2866

WorldView-3
【WRCの場合】
 Pnchromatic:1583.58 (W/m2/μm)
 Coastal:1743.81
 Blue:1971.48
 Green:1856.26
 Yellow:1749.4
 Red:1555.11
 Red Edge:1343.95
 NIR1:1071.98
 NIR2:863.296
 SWIR1:494.595
 SWIR2:261.494
 SWIR3:230.518
 SWIR4:196.766
 SWIR5:80.365
 SWIR6:74.7211
 SWIR7:69.043
 SWIR8:59.8224


 この式から分かるように、輝度から反射率を求めるには、地球太陽間距離dと太陽天頂角θを知る必要があります。

 太陽天頂角は、ALOSの場合は、リーダファイルのシーンヘッダに記載されている太陽仰角(太陽高度)、あるいはサマリ情報ファイル(summary.txt)に記載されている太陽仰角から、以下の式により求めることができます。


 太陽天頂角 = 90度 − 太陽仰角


 また、地球太陽間距離d[単位:AU]は、イメージ撮影日(世界標準時)から以下の式で、Julian Dayを求めます。


 year=観測年(西暦)、month=観測月、day=観測日、UT=観測時=hour+minute/60+second/3600

 ただし、monthが、1月または2月の場合、year=観測年-1、month=観測月+12 を用いる。

 Julian Day(JD)は、上記の year、month、day、UTと、下記のAおよびBより、次のように求められます。

 A=int(year/100) 

 B=2−A+int(A/4)

 JD = int{365.25☓(year+4716)}+int{30.6001☓(month+1)}+day+UT/24+B−1524.5

 この値が、紀元前4713年1月1日の正午からの日数(JD)になります。

 「US. Naval Observatory」によると、このJDから地球太陽間距離は、次式で求めることができます。

 D=JD−2451545.0

 g=357.529+0.98560028☓D ・・・・単位:度

 gをラジアン単位にするには、g=g☓π/180度

 よって、地球太陽間距離d [AU] は、

 d=1.00014−0.01671☓cos(g)−0.00014☓cos(2☓g)


 地球太陽間距離のエクセルの計算ファイルは、ここからダウンロードできます。


 当サイトでは、ALOS衛星AVNIR-2のリーダファイルからAVNIR-2反射率計算パラメータ表示するフリーソフトを提供しています。

 なお、当サイトで紹介しているリモートセンシング画像処理ソフトRSPは、32ビット(float)RAWファイル画像を取り扱う(上記の演算処理ができるとともに作成した画像を表示する)ことができます。RSPにおいて、ビットマップファイルをRAW(float)ファイルに変換する方法は、メニュー「RSP」→「RSP Q&A」の「放射輝度、反射率」を参照してください。


Landsat-8における反射率への変換方法

 Landsat-8では、16ビットのQcal(デジタル・ナンバー)を以下の式を使って、反射率に変換します。


 ρλ = (Mρ・Qcal+Aρ)/cos(90°−θSE


 ここで、ρλ:反射率(%)

     Qcal:デジタル・ナンバー

     Mρ:乗数

     Aρ:加数

     θSE:太陽高度(度)


 詳しくは、Using the USGS Landsat 8 Productを見てください。


 各値は、データをダウンロードしたときのテキストファイルに記載されています。


 Landsat-8を例として、RSP を使った反射率変換方法を以下に記載します。


 具体の反射率への変換方法は、Landsat-8画像を見てみように記載しているため、参考にしてください。


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【変換式を使って求める場合】

 1.TIFFファイルをRAW(16ビット)ファイルに変換する

  メニュー「ファイル」→「フォーマット変換」→「TIFF(GeoTIFF)」→「16bit→RAW(unsigned int)」でRAWファイルに変換します。


 2.RAW(unsigned int)ファイルをRAW(float)ファイルに変換する

  メニュー「ファイル」→「フォーマット変換」→「RAW」→「RAW(unsigned int)→RAW(float)」で、変換します。


 3.Qcalを反射率に変換する

  メニュー「ツール」→「float処理」→「演算」→「=a*(A)+ b」で、aの値にMρを、bの値にAρを入力します。

  次に、メニュー「ツール」→「float処理」→「演算」→「=a*(A)+ b」で、aの値に(1÷sin(θSE))を、bの値に0(ゼロ)を入力します。


 4.ゼロ以下、1以上の値を修正する

  反射率の範囲は、理論上、0から1までの数値です。しかし、上記の変換式で、ゼロ以下の値や、1以上の値が求まる場合があります。

  このため、ゼロ以下の値をゼロに、1以上の値を1に補正しなければなりません。

  この補正処理を「ピクセル値変更」処理を使って行います。

  メニュー「ツール」→「float処理」→「編集」→「ピクセル値変更」で、マイナス領域(範囲)のデータを0にします。

  続けて、メニュー「ツール」→「float処理」→「編集」→「ピクセル値変更」で、1以上のデータを1にします。


 以上の処理を経て、Landsat-8のデジタル・ナンバーを反射率に変換することができます。



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【RSPの専用機能で求める場合】


 1.TIFFファイルをRAW(16ビット)ファイルに変換する

  メニュー「ファイル」→「フォーマット変換」→「TIFF(GeoTIFF)」→「16bit→RAW(Unsigned int)」でRAWファイルに変換します。


 2.RAW(unsigned int)ファイルを反射率画像(RAW,Float)ファイルに変換する

  メニュー「ファイル」→「ツール」→「Landsat-8(RAW,unsigned int)→反射率」で、Mρ、Aρ、太陽高度(太陽仰角)(度)の値を入力し、出力先として「Float」を選択し、「作成」ボタンを押します。

  「1.」で変換したRAWファイルを選択し、次に、保存先ファイル名(反射率画像ファイル名)を入力します。


 これにより、Landsat-8のデジタル・ナンバーを反射率に変換することができます。なお、「2.」の処理は繰り返し行うことができます。

 また、反射率画像(RAW,Unsigned int)ファイルに変換する場合は、上記「2.」の出力先選択として「Unsigned integer (*10000)」を選択します。

 「*10000」は、反射率(最大値:1)を10000倍した値で出力する(最大値:10000)という意味です。